静岡地方裁判所富士支部 昭和62年(ワ)171号 判決 1988年4月19日
原告 株式会社アイチ
右代表者代表取締役 市橋利明
右訴訟代理人弁護士 茂木洋
被告 池田せつ
右訴訟代理人弁護士 渡辺正臣
被告 渡辺勇
被告 林安夫
右訴訟代理人弁護士 井上勝弘
主文
本件訴をいずれも却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 原告
別紙請求の趣旨記載のとおり
二 被告池田
1 本件訴を却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
原告の被告池田に対する請求はいわゆる訴の主観的予備的併合にあたるものであり、許されない形態の訴である。
三 被告林安夫
(本案前の答弁)
1 本件訴を却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
原告の被告林に対する請求はいわゆる主観的予備的併合といわれるものである。しかしながら、このような訴を認めることは予備的被告の地位を極めて不安定にするものであり、不適法として却下されるべきである。
(請求の趣旨に対する答弁)
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求の原因
別紙記載のとおり
二 被告林の請求の原因に対する認否
第二次的請求の原因第一項の(一)ないし(三)は不知。
同第二項は否認する。
同第五項は争う。
三 被告渡辺
被告渡辺は適式の呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。
理由
一 本件訴の適法性について検討するに、原告の被告ら三名に対する請求は、分離前相被告池田九平次に対する連帯保証債務履行の第一次的請求が理由のないことを前提にして、第二次的、予備的に損害賠償を請求するものであることが明らかであり、いわゆる主観的予備的請求の併合にあたるものであるところ、このような予備的被告とされた者は、いつ自己に対する予備的請求の審判にはいるかについての保障がないので終始弁論に関与しなければならない一方、主位的被告に対する請求の審理中はほとんど何もできない地位に置かれるし、主位的被告に対する請求認容判決が確定すれば、自己に対する請求棄却判決を受けることなくその地位は消滅し、結局審理に関与する必要がなかったことになるし、再訴を阻止する手段もないので、応訴上著しく不安定、不利益な地位に置かれることになるものであるから、当該予備的被告が関連請求につきすでに同一訴訟手続内で被告とされているなどの特段の事情のあるばあいを除いて、かかる主観的予備的請求の併合は不適法な訴であるというべきである。しかして、本件においては、被告渡辺は適式の呼出を受け、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しないが、こうした態度から直ちに同被告に右特段の事情があるものとは認めることは許されず、その他被告ら三名につき右特段の事情がある事実は記録上これを認めることができないから、本件訴はいずれも不適法なものというべきである。
二 よって、本件訴をいずれも却下することとし、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 榎本克巳)
<以下省略>